■日本支援者支援学会設立趣意書

1.設立の趣旨

近年、社会福祉、医療、心理、教育、看護、介護、動物福祉等の対人・対生命援助領域において、支援に従事する者(専門職、ボランティア、家族等のケアを担う者を含み、以下「支援者」)の心身の疲弊、共感疲労、バーンアウト、心的外傷、倫理的葛藤、専門職アイデンティティの揺らぎなどが、国際的にも重要な課題として認識されている。また、職場の定着支援、被災地支援に従事する支援者に対する支援の不足も、大きな課題である。

支援者の疲弊・疲労・心的外傷は、個人の問題にとどまらず、「支援の質」の低下や組織機能の停滞を招き、ひいては利用児者・当事者の権利保障やウェルビーイングの悪化につながる構造的問題である。

こうした課題に対し、これまで各専門領域において個別的な研究や実践が積み重ねられてきた。しかし、支援者を支援するという視点――すなわち「支援者支援」を中心概念として据え、学際的・横断的に理論化・実証・実践を統合する場は、日本においても国際的にも十分に確立されているとは言い難い。

本学会は、支援者支援をめぐる理論・研究・実践を学際的に結集し、支援者が持続可能なかたちで支援を続け得る社会的・組織的・文化的条件を明らかにし、その社会実装を推進することを目的として設立されるものである。

2.学会の基本理念

日本支援者支援学会は、次の理念を共有する。

  1. 支援者もまた支援を必要とする存在であるという人間観・生命観を基盤とすること。
  2. 支援者支援は、個人のセルフケアのみに還元されるものではなく、関係性・組織・制度・政策・文化を含む多層的課題であると捉えること。
  3. 支援者支援は、職業的な専門職のみならず、家族介護や近隣支援、ボランティア活動等のインフォーマルな領域における支援活動も重要な対象とすること。
  4. 支援の質は、支援者のウェルビーイングと相互補完的関係にあると理解すること。
  5. 人と命、人と人、人と動物、人と社会等との関係性を包括的に捉える学際的視座を重視すること。

3.対象とする学術領域

本学会は、以下の学術領域および実践分野の研究者・実践者・教育者等の参加を広く歓迎する。

  • 支援者支援学
  • 社会福祉学
  • 精神医学・心療内科学
  • 臨床心理学・精神分析学
  • 看護学・保健学
  • 教育学・特別支援教育
  • 介護福祉学・リハビリテーション学
  • 産業保健学・産業医学・労働科学
  • 獣医学・動物看護学・動物学・動物福祉学(伴侶動物、展示動物、産業動物、実験動物、野生動物、シェルターメディスン等)
  • 家族介護者への支援
  • ボランティア学
  • その他、支援者支援に関連する諸分野

4.研究・実践の主なテーマ

本学会が主として扱うテーマには、以下を含むが、これらに限定されない。

  • 支援者支援の理論的枠組み(支援者支援学、受援力・支援力の相互性等)
  • 共感疲労、共感満足、バーンアウト、二次的外傷性ストレス、心的外傷後成長、感情労働、レジリエンス、代理性トラウマ等、支援者支援に関わる諸概念および概念間の関連性
  • 支援者の専門職アイデンティティおよびケアラー(家族等の支援者)としての役割葛藤
  • セルフサポート、グループサポート、組織的サポートの理論と実践の構築
  • スーパービジョン、コンサルテーション、ピアサポート(専門職ピアサポート、および家族・当事者会等による相互支援)
  • 組織文化、チーム支援、マネジメントと支援者支援
  • 倫理的葛藤、モラル・ディストレスと支援者支援
  • 災害精神保健・医学・福祉等の領域における被災地支援・被災児者支援
  • 災害時の行政、消防、警察などの公的職種への支援
  • 人と動物の支援関係における支援者支援
  • 支援者支援の評価指標、アセスメント、モニタリングシステム
  • 支援者支援コーディネーター
  • 支援者支援の国際比較、国際的な支援者支援等
  • その他

5.活動内容

本学会は、以下の活動を行う。

  1. 学術大会、研究集会、シンポジウム等の開催
  2. 学会誌および研究成果の発信
  3. 学際的共同研究および実践研究の促進
  4. 実践者・支援者を対象とした研修・教育活動
  5. 社会提言および政策形成への学術的貢献
  6. 国際的学術交流・国際的活動の推進
  7. その他、本学会の目的達成に必要な活動

6.社会的意義

日本支援者支援学会は、支援者が孤立や自己犠牲に陥ることなく、相互に支え合いながら専門性を発揮できる社会の実現に寄与することを目指す。そのことは、結果として支援を受ける人々や動物の尊厳と生活の質を守り、持続可能な支援システムを構築する基盤となる。

本学会は、支援者支援という新たな学術的・実践的領域を切り拓き、日本社会及び国際社会における支援文化の成熟に貢献することをここに宣言する。

以上の趣旨に賛同し、日本支援者支援学会の設立に参画されることを広く呼びかけるものである。

2026年2月8日

日本支援者支援学会設立発起人(五十音順)

伊藤 嘉余子 (いとう かよこ)
宇野 耕司 (うの こうじ)
梅崎 薫 (うめざき かおる)
加藤尚子 (かとう しょうこ)
小泉 誠 (こいずみ まこと)
趙 正祐 (ジョ ジョンウ)
須江 泰子 (すえ やすこ )
高橋 晶 (たかはし しょう)
野口 代 (のぐち だい)
野田明敬 (のだ あきのり)
藤岡孝志 (ふじおか たかし)
和田上貴昭 (わだがみ たかあき)